作文・小論文|「正解がない」という誤解

「よく作文・小論文・論文には正解はなく、自由に意見を書いていいものだ」と誤解されています。例を挙げてみます。でも、それは基本的に誤解です。

以下の問題。解説を読まずに、少しの時間でいいので、考えてみて下さい。

憲法9条2項
前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権はこれを認めない。

(参考)9条1項
日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

問題『国の交戦権はこれを認めない』についてあなたの考えたところを書きなさい

難しい日本語も使われていませんから、小学生に書かせることもできる課題です。

私の場合、人に作文・小論文の考え方・書き方を教える時には、これについていろいろな学説と歴史があることを教えるところからスタートしています。なぜなら学生時代、この問題を見て、今までの作文・小論文の書き方が間違っていたと気付けた経験があるからです。

本当に小学生に適切な課題なのか?

実は、明大明治中をはじめ、上位の中学校では、憲法の条文を読ませるような問題も出題されています。憲法は小学校でも習うことですし、条文も読んだことがあるはずです。そうだとすれば、中学受験で出題されても、全く問題のない話なのです。

多くの人(子供も含めて)が書く答案

この課題文のポイントは、「前項の目的を達するため」と「国の交戦権」のそれぞれの意味をどう考えるかです。実際に、学問上も重要な問題になっています。

ついでに言えば、「戦力」って何だ?という議論もあるのですが、普通の人はそこまで踏み込まないケースが多いですね。これをしっかり説明するには、歴史の勉強も必要です。話が長くなるので、この記事でも省略しようと思います。

多くの人は、難しい議論に踏み込むのは避けるため、「国外でも国内でも、他国と武力で争ってはならない」という感じの意見・結論で考えます。その方針で問題ないでしょう。

そして、多くの人は、「自衛隊に違憲か合憲か」という議論に進みます。これも、それでいいと思います。どちらの立場を取るとしても、理屈が通っていれば、いい点数が解くでしょう。

大事なことは、「理屈が通っているか」です。

法律論文で想定されているレベル

ただし、司法試験やその他の法律論文の試験では、そのような答案では0点になってしまいます。どんなに理屈がしっかりしていて、文章がおかしくなくても0点です。

憲法9条は、憲法の中でも特に大事な条文です。歴史的にもいろいろありましたから、非常に研究もされています。そのことは、憲法の本を読めば、どんな基本的な本にも丁寧に書かれています。問われているのは、「その前提となる知識を整理・理解した上で、きちんと文章化できますか?」ということなのです。

『国の交戦権』という文言には、学問的に大きく2つの考え方があります。

・『国家が戦争を行う権利』
・『戦時国際法により交戦国に認められる諸権利』

この2つの考え方が出てこなければ、もうその時点で単純に勉強不足です。そして、この2つの考え方のどちらを取るかで、憲法9条の解釈や結論が大きく変わります。

こういう違いがあることは、当然勉強していなければなりません。つまり、受験生に問われていることは、「あなたはどちらの考えを支持しますか、その理由は何ですか」ということなのです。

一般的な作文・小論文の話

実は、中学受験・高校受験・大学受験はもちろん、どんな作文・小論文でも、「当然こういうことは勉強してきているだろう・考えてきているだろう」という前提の話があります。

例えば、医学部の入試

安楽死やクローンといったことに関する出題が少なくありません。

医療を志す以上、避けて通れない倫理的な難題です。真面目に対策している多くの受験生は、受験対策の間に、たくさん文献に触れていることでしょう。その1回1回で、きちんと文章を理解して、自分の知識にしてこれた人だけが、答案を適切に書くことが出来ます。

一方、この論点を理解できていない人は、自分が勝手に考えたことを書くしかありません。ですから、本番では低い点数になるでしょう。

気を付けなければならないのは、模試などでは加点方式で採点するため、課題文の用語がある程度拾えていれば、そこそこの点数が付くということです。しかし、本番では、論点の理解が問われるため、「単語が拾えていれば点数がもらえる」というようなことには、通常なりません。

ですから、それぞれのトピックで、どういう考え方があるのか、どういうことが問題視されているのか、そういったことをきちんと学習しておかなければなりません。それを理解しないまま入試に臨むのは、勉強不足でしかありません。

例えば、中学入試

中学入試では、中学に入ってから英語・数学や人間関係にどのように取り組むか、という視点での作文課題がよく出題されます。

この場合の前提となる知識・理解は、中学・高校生活と、志望校についてです。

自分がこれから6年通う学校です。普通なら、期待と不安をもって、学校のことを調べていて当然です。といっても、小学生にはそこまでなかなか取り組めないでしょうか、それは通常、親がしっかり刷り込むことになります。

ところで、公立中高一貫校は、国公立大学に進学させるために設立されているといっても過言ではありません。国公立大学に入れる子の養成学校ですから、たくさんの科目を、高いレベルで、しっかり勉強してくれる生徒が欲しいです。

そうなると、試験では「言われるがまま勉強してきただけ」という生徒を落としておきたいですね。自分で主体的に勉強できるよう訓練された子でなければ、6年間戦い抜けません。

そういう意図で、対策が難しい、幅広いテーマの作文が、都立中・公立中高一貫校で出題されることになります。

「正解がある」の意味

上の例で言えば、「医療はこうあるべき」「英語の勉強はこうあるべき」「数学の勉強はこうあるべき」「人間関係はこうあるべき」ということについて、ある程度のパターンは決まっています。

ほとんどのことは、世の中の先輩が、考え抜いてくれています。先輩からしっかり学び、受験生はその中で選択し、丁寧に記述するのです。結論や根拠では、ほとんど自由な意見なんて書けません。そういう意味で、作文・小論文には正解があります。

ただし、「どうしてそちらの考えを選んだのか」という部分については、自分の体験に基づいて、しっかり説明しなければなりません。これについては、人によって異なって当然です。ここは、差が付きます。

ただし、それにしたって、「しっかり説明」するというのは、筋道立てて論理的に説明するということです。特徴ある論理も、特徴ある文章もいりません。「こういう方針で書くなら、こういう根拠で書いて、こうまとめるしかない」というように、ある程度一本道になってしまいます。

つまり、それぞれの人の作文・小論文において、「こう書きたいならこう書くしかない」というように、「正解」となる書き方があるのです。

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